>>509つづき
シンガー氏は1月に大手米紙に「ドローンは民主主義をむしばむか?」というタイトルで文章を投稿した。
戦争と平和は国家と人民にとっては重大な関心事であるはずだが、UAVによって戦争による自国兵士の死傷者が減少し、
政治家もメディアも戦争にまつわる判断や行動をかつてのようには重要視しなくなる傾向が現れ始めていると警告を発した。
同氏は次のように書く。「私は(UAVを使った)攻撃を非難しているのではない。そのほとんどを支持している。
しかし私が問題視するのは、新しい技術が、かつては民主主義国家にとって最重要な選択だった意思決定過程を短絡化しているということだ。
従来は戦争だと見られてきた事象が、戦争のように扱われなくなってきたのだ」

一方、兵士側もストレスを感じている。米国防省の調査によると、UAVのパイロットの30%が「燃え尽き症候群(バーンアウト)」を経験している。
ニーズの急増で無人機パイロットは長時間労働を強いられてきたのが大きな理由だが、
「戦争のさなかで無人機を操縦し、その20分後には子供たちと夕食の席についているといった奇妙なギャップ」がストレスを生んでいるとシンガー氏は説明する。

「パイロットの退屈も大きな要因だ」(MITのカミングズ准教授)。
厳しい訓練を経て最前線で活躍してきた戦闘パイロットにとって、画面の前にじっと座って無人機を操縦するのは退屈でならない。
このため、空軍は新たな無人機オペレーターのリクルートと教育に積極的に取り組んでいると同准教授は言う。
しかしそれはそれで、戦地の経験が全くない人間にUAVによる攻撃を任せていいのかと疑問に思うのは私だけだろうか。

またUAVの大きな特徴は燃料のある限り、四六時中、空中にいられるということ。
軍需メーカーの米ノースロップ・グラマンは、実験用無人機「X- 47B」で、同機が別の機体に空中で着陸し、燃料補給を受けられるような開発に取り組んでいる。
空中からの絶え間ない監視は許されるのか、国際的な法律の枠組みの議論はこれからだ。