「鼻をつまんで管を支持する」(2) 矢作俊彦

私は、その菅を支持する。少なくとも権力の間近にあって、東京電力と原発について、
言葉を濁すことなく、まともなことを言っているのは彼と小泉純一郎と河野太郎だけ
だから。その中で、菅のみが権力中枢の、それもトップにあるからだ。

長嶋茂雄が監督を辞めた翌々年、私は一年間タイガースを応援した。長嶋が愛した
野球チームの行く末を案じて、タイガースの優勝を心底願った。今の気持は、
それによく似ている。しかたない。鼻をつまんで菅を支持する。
フクシマを遠く離れて、言うべきことを思いついた。何事にも距離感が必要だ。
恋も戦いも、そして言葉も。もう一度だけ言っておく。私は、鼻をつまみ、
断固として菅首相を支持する。

日が傾き、じきに飲んでも叱られない時刻になる。だから2、3付け加えておこうと
思う。『菅は品性下劣、自己の栄達しか考えていない。そんな者に与するのか』と、
半ば叱責に近いご質問をいただいた。ひとりならず、似たようなご質問を。
答えは簡単、yes! 逆に、それゆえ私は支持する。

無能かもしれない。性格が悪いかもしれない。しかし(前の誰かのように)わが王様は
決して愚かではない。延命のために何をすればよいかを彼は知っている。
パンプロー ナの牛追い祭りのように、彼を引き返しのきかない隘路に追い込むこと。
私たちに今できることは、それくらいしかない。

その賎しさ、さもしさのみを信じる。自民党の誰それ、小沢被告一味の誰それが言う通り、
彼は延命のためならなんでもする。(世間の言いぐさを踏襲するなら)延命のためにのみ、
原発をひとつ止められたのである。あと150日延命できるなら、全部止めるかもしれない。

だから支持する。 その賎しさ、さもしさのみを信じて。その性格ゆえ、彼ひとりが
出来るかもしれないのだ。小泉が郵政にやってのけたこと以上の芸当が。戦後日本国
というマシーンのチタニウムのように硬い横っ腹に風穴をあけることが。
ゆえに支持する。一切に鼻をつまんで。