>>341つづき
英政府は、2010年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、
余剰プルトニウムの議論が活発化したことを受けて、本格的な検討に着手。
今年2月に
(1)新技術が開発されるまで長期間保管
(2)MOX燃料として原発で再利用
(3)廃棄処分にする
−−の3案を国民に示した上で、(2)を推奨した。
MOX案については「新規工場の建設・運用費用50億〜60億ポンド(約6000億〜7200億円)が、核燃料販売価格(25億ポンド)を大幅に上回る」とし、
他案についても、長所、開発にかかる期間の見通しなどを記して意見を募った。

◇プルトニウム
自然界に存在しない元素で、1941年に核兵器開発中の米科学者が生成。
1グラムで1キロリットルの石油に匹敵するエネルギー量を持ち、「錬金術師の夢実現」と表現された。
世界では軍事、民生合計で約500トン、うち民生用は約300トンだが、余剰が増え続けている。
約45トンを保有する日本は「余剰プルトニウムは持たない」と国際公約しており、ウランと混ぜたMOX燃料を原発(軽水炉)で消費する「プルサーマル計画」を推進していた。

◇消費進まず、保管費用増大
【ロンドン会川晴之】
英国が世界最大の余剰プルトニウム保有国となったのは、高速増殖炉計画や、軽水炉用の核燃料に加工するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料工場が、技術的、経済的な問題で成果があがらず、プルトニウムの消費が計画通りに進まなかったためだ。
このため余剰量は増え続け、テロリストが入手する事態を避けるための保管や、多大な費用の捻出が財政危機を背景に困難となってきた。
英国の脱プルトニウム政策は、高速増殖炉を含む原子力発電を「準国産エネルギー」と位置づける日本にとっても、核燃料サイクル事業の見直しを判断する材料になるのは確実だ。

英国は、西側世界初の商業炉(1956年)、高速増殖実験炉(59年)を開発するなど、常に原子力開発の先陣を切ってきた。
石油など化石燃料が枯渇するとの懸念が高まっていたのが背景で、50年代初頭から本格化した核兵器開発と連動する形で核燃料開発に注力した。