想定される「最悪の事態」とはどんな事態なのか
万が一、冷却に失敗したら
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2410

元東芝の原子炉格納容器設計者・後藤政志氏は、29日の講演で聴衆から「最悪の事態はどのようなものと想定されますか」と質問を受け、「いまのところ可能性は低いと思いますが・・・」と前置きしながら以下のように回答した。
「すでに炉心はかなり溶融(メルトダウン)していると思いますが、さらにこれが進んで圧力容器の底に落ち、熱い核燃料の塊ができて、それが圧力容器を突き破り、底に抜けた場合です。
 そこに少量でも水があれば、大きな爆発的事象≠ェ起こる可能性がある。可能性は低いですけれどもね。そうなれば、チェルノブイリのように大規模に放射性物質を噴き上げるかもしれない。
いわゆるチャイナシンドローム(地球の裏側まで届くような深刻な放射線被害)と言われるような現象ですね」


 後藤氏と同じくかつて東芝に勤務し、原子炉の安全性研究に携わっていた奈良林直・北海道大学大学院教授は、途中までの進展は後藤氏同様の見解だが、結論では意見を異にしている。
「今回のようなシビア・アクシデントで欧米諸国が心配していたのは、炉内が冷やしきれなくなって圧力容器の底が融点に達して溶け、核燃料ごとドンと下に落ちるというメルトダウンです。
しかし、今回の場合はすでに4000tもの水を外部から入れているわけですから、圧力容器の外側にある格納容器にはかなりの水が溜まっていると考えられる。
 2号機、3号機は圧力容器底部の、制御棒を差し入れる管の溶接部分などの比較的弱い部分が損傷して、すでに核燃料が漏れてぽたぽた落ちている状態だと見ています。
これが少量ずつ下に落ち、底にある水のなかでジュッと冷やされて固まっている。だから2号機、3号機は炉内の圧力や温度が上がらないで済んでいるのではないでしょうか。
いわば、炉の損傷が結果的に弁の役目をして、ベント(圧力を逃がすこと)してくれたんだと思うんです。
 おそらく、すでに燃料の半分以上が漏れ出して下の水の部分に溜まっていると考えています。
 1号機は、まだ燃料が漏れないで炉のなかにあるのでしょう。これは冷やし続けるほかない」