15歳未満で初の脳死判定 家族が承諾、臓器移植へ
2011年4月12日 13時47分

日本臓器移植ネットワークは12日、
関東甲信越地方の病院で交通事故による頭部外傷の治療を受けていた10〜15歳未満の男子が、家族の承諾により改正臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表した。
男子は書面などで提供の意思表示はしておらず、家族が「彼の身体を役立てることが彼の願いに沿うこと」などとして承諾した。

昨年7月の改正移植法の施行後、脳死下の臓器移植は42例目で、15歳未満の子どもが臓器提供者(ドナー)となるのは初めて。
また家族承諾による提供は39例目。移植ネットは、待機患者の中から優先度の高い患者を選定し、移植の準備を進めている。

移植ネットによると、主治医は8日、男子が回復の見込みのない状態で、臓器提供の機会があることを家族に伝えた。
9日と11日の2回、移植ネットのコーディネーターらが父母ときょうだいの家族3人に計3時間半にわたって説明し、11日午前11時半に家族の総意として承諾した。

1回目の脳死判定は11日午後8時25分に行われた。子どもの脳死判定は6歳以上は6時間以上の間隔を空けることになっており、12日午前7時35分すぎに、2回目の判定で法的な脳死と判断された。

家族が承諾した摘出臓器は心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓(すいぞう)、小腸。摘出チームの医師は12日午後11時ごろ病院に集まり、翌13日午前4時ごろから摘出が始まる予定。

同法では、虐待を受けた疑いのある18歳未満の子どもは提供対象者とならない。
移植ネットによると、同病院は虐待防止委員会を設置し、医学的に虐待の疑いがないと判断した。ただ、虐待判定の中身については「判定は医学的で病院に虐待がないことを確認した」との説明にとどまった。

移植ネットは、家族の「個人が特定される」との意向で、男子が交通事故にあった時期や入院した病院名などを公表しなかった。

移植法改正前は、法的に遺言ができるのは15歳以上で、15歳未満の子どもは提供の意思表示は認められず、ドナーになることはできなかった。
法改正で、年齢制限が撤廃され、子どもを含め、生前に書面などで拒否していなければ、本人の意思表示が不明でも家族の承諾で提供が可能になった。
(中日新聞)