核燃料サイクルのもう一つの要である高速増殖炉の開発も、順調に進んでいるとは言えない。
原型炉「もんじゅ」が今年、14年ぶりに運転を再開したばかりだが、8月末に原子炉容器内で、
クレーンでつり上げていた約3トンの重要装備を落とした。
点検で原子炉を止めていたため直ちに安全性への影響はない。しかし、炉内に損傷はないか、確認は遅れている。
開発に取り組む日本原子力研究開発機構では、これ以外にも警報装置の設置不良など、
防げるはずのトラブルが後を絶たない。再発防止策の確立が求められる。
核燃料サイクルでは、回収したプルトニウムを燃料に使う発電が昨秋、九州電力で始まり、他電力にも広がっている。
一歩前進だが、核燃料サイクルの完成図にはほど遠い。局面打開に緊張感を持ってもらいたい。
(2010年10月16日01時07分 読売新聞)