http://mainichi.jp/life/ecology/ecoeco/news/20100611ddm005070044000c.html

 巨大タワー(高さ1キロ、直径2〜3キロ)を赤道直下の洋上に浮かべ、3万〜5万人が
暮らす完全自給都市を造ろう−−。大手ゼネコンの清水建設の提唱に、全国14大学の連合体
「スーパー連携大学院協議会」と野村証券が5月に賛同した。夢物語のような構想だが、
15年後に実現させる動きが始まった・清水建設提供。

 構想では、地球温暖化など環境問題の一挙解消を狙う。タワーの上から300メートル分の
居住区は、赤道直下では強風がなく、気温が一年中26〜28度で空調が不要。どこでも歩い
ていける距離で「究極のコンパクトシティーになる」と説明する。

 すり鉢状の頂上部で雨水を集め、家庭の生ゴミや廃棄物を資源化して、タワー中層階の
「植物工場」や沿岸部の「海洋牧場」で食料自給に使う。上下端の温度差で空気は自然循環し、
太陽熱利用や海水の温度差発電などで二酸化炭素の排出ゼロも可能という。洋上をゆっくりと
回遊する、なんとなく「草食系」の未来都市に、協議会委員長の梶谷誠・電気通信大学長は
「どこの国にも属さない理想郷にしたい」と語る。

 清水建設の宮本洋一社長が強調するのは、「社会の閉塞(へいそく)感」の打破だ。今の日本
の若者は「人生で一度も明日の方が今日より良くなることを経験したことがない」(鷲田清一・
大阪大学長)とされる世代。あえて若手社員を集め、一から構想を練らせたそうだ。

 政府は、環境分野の技術革新を成長戦略の柱に据えるという。月を目指した米国の「アポロ計画」
のように、立ち向かう具体的な目標を掲げてこそ、技術(者)は飛躍的に伸びるはず。「理系宰相」
の菅直人首相は8日の就任会見で、同じように閉塞感を危惧(きぐ)した。指導力に注目したい。