「波エネルギー」―日本の経験と展望―
http://www.cdit.or.jp/magazine/vol1/p02.html

 ノルウエーの沿岸には北極海からの高波がうち寄せ、年間平均の波エネルギーは
海岸一mあたり四十kWにも達する。ノルウエーでは、越波貯留型(三百五十kW)及び
空気流方式(五百kW)の大型発電装置が開発された。前者は北海に面した南部海岸の
岩礁地形を利用して建設され、一九八六年から試験運転が続けられている。
英語の頭文字をとってタプチャンと呼ばれている。

 自然エネルギーは、その大きさが変動するのが特徴である。波は時々刻々にその高さが変化し、
また季節によってその大きさが異なる。日本海沿岸のように、夏はべたなぎが続く一方で、
冬は荒波のシーズンとなる。
 こうした波の変動性は、エネルギー利用の上ではマイナス要因となる。ノルウエーで実験中の
越波貯留方式の場合には、数十分規模のエネルギー変動は平滑化できるけれども、日単位の変動を
カバーすることはむずかしい。可動物体方式や空気タービン方式では、分単位の変動の影響を
直接に受けてしまう。
 もう一つの問題は、波がある限度以上に大きくなったとき、装置が破壊されないように運転を
停止しなければならないことである。風力発電とも共通する問題であり、それぞれの地点における
賦存エネルギーの全量が利用可能なわけではない。

 波力発電の原価は設置地点や発電方式によって大きく異なる。ノルウエーの二つの民間会社では、
条件が良ければ五百kW級の発電施設で一kW時あたり十四円と見積もっている由である。
 沿岸センターが組織した研究会の調査では、空気タービン方式の波力発電装置を離島の防波堤に
付設し、商用電力の補助電力として利用した場合で一kW時あたり二十五〜四十円の試算結果が
得られている(商用電力の二〜三割を受け持ち、二十四時間稼動の場合)。