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■恐怖から目をそらしたい

 別の説明もある。世界は破滅に向かっているという恐ろしい真実から目をそらしたり、
脅威を和らげて理解しようとするのは人間の本性だというのだ。

 パリ(Paris)のエコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)のジャンピーエル・ドュピュイ
(Jean-Pierre Dupuy)教授(社会心理学)は、「破滅に際して、人間は自分が知っていることを
信じようとしない」と語る。

 前述のグレーリング教授も「だれもが現実を否定し――あるいは否定したいと思い――
あまり大きな責任を負わされたくないと思っている。ここに一種の断絶がある」と説明する。

 オーストラリア国立大学(Australian National University)のクリーブ・ハミルトン
(Clive Hamilton)教授(公共倫理学)は、9月に英オックスフォード(Oxford)で
開かれた気候変動の会議に出席したとき、科学者同士の会話を聞いて驚いたという。

 この会議のテーマは気温が4度上昇した場合に世界にどのような影響が出るかという問題だったが、
科学者同士のフランクな会話では科学者が果たすべき役割についてなどではなく、
「怖いだとか、最近眠れなくなったとか、そんなことを話していた」