環境チャレンジ<8>エネルギー会社の競争 『省エネ』提案で需要狙う
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20100109/CK2010010902000079.html

 年間で延べ約二十一万人が利用する、さいたま市浦和区の県障害者交流センター。リハビリ用の
屋内二十五メートルプールは、室温、水温とも常に三一度に設定されている。「灯油代はプールだけで
年間約八百万円、施設全体では約二千万円かかっていた。この経費が削れたのは、
ありがたかった」。センター所長の峰川正三さん(60)は顔をほころばせる。

 昨年四月、館内の温度を管理する大型ボイラーを撤去、エアコンのように冷媒を圧縮・膨張させて
熱交換する「ヒートポンプチラー」と呼ばれる電気式の機械に入れ替えた。施設全体の光熱費は
同九月までの半年間で、前年同期比56%減の一千八十万円。各機器の管理を一社に
まとめた効果も加わり、年間の経費削減は約二千二百万円に上るという。

 県に電化を提案したのは、東京電力などが出資するエネルギーコンサルティング会社
「日本ファシリティ・ソリューション(JFS)」。「電化で、大幅に省エネと経費削減が図れる」
と売り込んだ。アシスタントマネージャーの安孫子崇弘さん(37)は
「センターでの二酸化炭素(CO2)排出量も四分の三になった。
スーパーアリーナ四個分の植樹に匹敵する効果があった」と計算する。

 同社は、二〇〇八年四月に県立循環器・呼吸器病センターで灯油ボイラーを、〇九年四月には
さいたま市文化センターでガスの空調・給湯施設を、いずれもヒートポンプチラーに交換した。

 電力会社にとって、省エネは時代の要請。同時に、需要も増やしたい。そこで、高効率の設備や
ノウハウを提供し光熱費を削減する手伝いをしつつ、電化を売り込んでいく。

 安孫子さんは「正直、この事業単独の収益は少ない。長期的な利益を考えています」。
行政施設で積極的に展開し、一般家庭への波及を目指す。