【寄稿】「トリウム発電炉」採用を/豊田正敏氏(元東京電力副社長、工学博士)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2009/20090923101336.asp

六ケ所再処理工場の完工時期が何度も繰り延べられ、今回さらに1年以上遅れることになった。
日本原燃はガラス固化設備の問題解決のため、設計の抜本的見直しをすべきであり、時間はか
かるが腰を落ちつけて取り組むべきである。

 ただ、ガラス固化設備は再処理工場本体の主工程ではない。高レベル放射性廃液をガラス
固化する付属装置にすぎない。廃液は貯蔵タンクに数年間貯蔵できるので、その間に改造する
時間的余裕が十分ある。従って、直ちに再処理工場の運転開始を認めるべきだ。主工程は
フランスで順調な運転を続けている再処理工場UP3の設計を踏襲し、十分な検討をしている。

 使用済み核燃料の再処理は、資源の有効活用や放射性廃棄物の減少につながるので、六ケ所
再処理工場は必要な施設だ。しかし再処理で取り出したプルトニウムをどのように活用すべき
かが課題である。

 わが国では、当面、軽水炉が主流となるが、将来ウラン資源が枯渇し、その価格が高騰する
事態に備え、燃やした燃料(プルトニウム)より多くの燃料(プルトニウム)を生み出す高速
増殖炉を次の原子炉とする基本路線を採用することにしている。

 しかし今世紀中はウラン資源枯渇の心配がない上に、高速増殖炉は原型炉「もんじゅ」が
13年間止まったままだ。開発スピードが遅く、軽水炉に比べ系統が複雑で建設費が高い上に、
燃料加工費や再処理費用も軽水炉に比べて割高だ。今世紀中に軽水炉並みの経済性となる見込
みがない高速増殖炉に頼るわけにはいかない。

 そこで回収したプルトニウムをウランに混ぜたMOX燃料を軽水炉で燃やす「プルサーマル」
が当面の主役に躍り出たわけだが、プルサーマルにも問題がある。