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オバマとトリウム

 すなわち、米国がトリウム原子力によって、地球温暖化対策と核廃絶の
ために世界のリーダシップをとるとともに、グリーン・ニューディ−ル政策
の推進にも役立てようとしているのではないかと読みたくなるわけだ。ブッ
シュ前大統領の原子力回帰政策をオバマ大統領は踏襲しなかったが、トリウ
ム原子力で大きな違いが出せるというものだ。亀井博士によると、今年6月
には米下院で、7月には上院で通過した国防予算法案の中に、海軍において
トリウム溶融塩炉の研究を進めることが入っており、2011年2月1日までに
国防委員会に報告せよとなっているそうだ。

 米国の三大ニュース誌の一つに「US.News&World Report」 という雑誌
がある。 2009年4月号は、GREEN Economyの特集号だ。その中でトリウム
原子力を紹介している。

 米国、チェコ共和国のほかに、トリウム溶融塩炉の技術開発に向けて動き
出した国としてはカナダ、ノルウェー、オーストラリアながである。インド
は60年にわたって独自に開発を進めてきた。そして、忘れてはいけないのが
中国の台頭だ。

 残念ながら日本では封印された状態である。これまで、ごく少数の技術者
が溶融塩炉の実用化の必要性を声高に訴えていたが、全く無視されている。
何しろ、東芝、三菱重工、日立製作所といった大企業が軽水炉型の発電所ビ
ジネスでフランスのアレバ社とともに世界にその存在感を示しているわけだ
から、大型タンカーのように簡単には国策の舵はきれないだろう。しかし、
世界の空気を読めないでいると、日本は世界から取り残される恐れも否定で
きない。