>>109(の続き)
 立地の難しさに加え、地熱発電はほかの自然エネルギーに比べて政策支援もぜい弱だ。
RPS法(新エネルギー等電気利用法)でも主力技術の蒸気フラッシュ発電は対象外である。100億円を
ゆうに超える初期投資も重くのし掛かる。この状況に、地熱発電の開発企業は悲鳴を上げている。

 福島県で柳津西山地熱発電所を運営する奥会津地熱(福島県柳津町)の安達正畝社長は、「立地も難
しいが経済的にも厳しい。貯留層を当てるのはハイリスクだが、リターンが小さく事業としてのうまみ
が少ない」と顔をしかめる。建設に積極的な企業も、ほとんどない状態だ。実際、99年に八丈島地熱
発電所が稼働して以来、新設の動きは止まっている。

 福島県の柳津西山地熱発電所
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 だが、これまでに地熱発電につぎ込まれた資金は、民間からの3000億円超と国の補助金などを合わ
せて1兆円に上るといわれる。国内の地熱発電容量の53万kWのために1兆円をつぎ込んだ計算だ。新設
への道筋を付けないと、1兆円をドブに捨てることになる。また、将来のエネルギー供給を考えても、
火山国である日本が地熱を利用しない手はない。


科学分析で影響度わかる(2)

 八方ふさがりの地熱発電だが、解決策はある。科学的な裏付けを基に議論することと、技術ノウハウ
や資金を温泉地に提供することだ。

 地熱発電研究で著名な日鉄鉱コンサルタント(東京都港区)の野田徹郎顧問は、「地質と水やガス、
熱の移動を調べれば温泉に影響が及ぶかどうか科学的に説明できる」と断言する。この考えには
中央温泉研究所の甘露寺所長も同意する。