(読売新聞朝刊2007年11月19日より)
「温暖化で悪循環」
 大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が2000年以降、急速に上昇して
いるのは、排出量の増加だけでなく、大地や海洋による、CO2の吸
収能力が低下し始めているためであるという分析結果を、豪欧米の国
際研究チームが発表した。
 産業革命前に280PPM(PPMは100万分の1)だった大気中のCO2の
濃度は、2006年は381PPMに増大。上昇率は、1980年代の毎年1.58PPM
、90年代の同1.49PPMから、2000年以降は同1.93PPMへと急増してい
る。
 研究チームはその原因を、排出量の統計や、気候変動のコンピュー
ター実験などのデータを活用して分析。00年以降の増加量のうち、65
%は経済発展、17%はエネルギー効率の低下による排出増加だが、残
る18%は地球の吸収能力の衰えによるものだとわかった。
 研究チームは、温暖化によって大気の循環が変動、風の吹き方が変
わることで、南半球ではCO2濃度が高い海水が表面に上がり、海洋
がCO2を吸収しにくくなっているとみる。さらに、干ばつでCO2の
吸収源となる植物の成長が遅れたことなど、地球温暖化の現象自体
が、吸収能力をますます低下させる悪循環を指摘している。研究成果
は、米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。(ワシントン=増満
浩志)