公害訴訟の原告ら、ぜんそく患者救済の新たな仕組みづくり要望へ
12月29日17時8分配信 産経新聞

大阪市や兵庫県尼崎市などで、自動車排ガスなどによる大気汚染訴訟を起こした原告らが来年、国に公害病認定をされず、医療費負担を強いられているぜんそく患者救済に向けた新たな仕組みづくりに相次いで乗り出すことが分かった。
未認定患者の健康診断調査や医療費助成制度の創設を地元自治体に要請。助成費用の拠出を国や主要な自動車メーカーなどに求める。
東京大気汚染訴訟の和解で東京都が検討する案がモデルで、さらに今後、全国に広がる可能性もある。
国道43号沿線の住民らによる大阪・西淀川公害訴訟や尼崎公害訴訟、首都圏の神奈川・川崎公害訴訟の原告ら。
いずれも平成10〜12年に国などと和解が成立している。
大気汚染が原因のぜんそく患者の医療費では、公害健康被害補償法に基づき、国が公害病に認定した患者を対象に全額補助。
しかし昭和63年の同法改正で、患者の新規認定が打ち切られたため、以後は、ぜんそくになっても、国からの助成を受けられない。
各地の原告の中には法改正後に加わった未認定患者も多く、医療費に毎月5〜10万円程度の負担を強いられているという。
しかし未認定患者が原告の約4割を占める東京大気汚染訴訟で今年8月、東京都が未認定患者の医療費助成制度をつくることなどを条件に和解が成立。
国が60億円、責任の一部を問われた自動車メーカー側が33億円を拠出する制度で、都内に1年以上住む都民を対象とし、年度内に創設される見込み。
各地の原告らは、東京訴訟の案をモデルに、未認定患者の実態やぜんそくは自動車排ガスが遠因だと推定できるデータがあれば、同様の制度を創設できると判断した。
尼崎公害訴訟の原告団が1月中に尼崎市に交通量調査や健康診断の実施を求めるほか、「川崎公害患者と家族の会」も国とメーカーに医療費負担を求める署名を集め、川崎市の2月議会に提出する方針。
大阪市内の公害患者らでつくる「大阪公害患者の会連合会」は20年末までに検討会を設置。
独自の健康調査の実施も検討していく。
環境省環境保健部保健業務室は「東京だけに制度創設を認めるのは偏りがある」とし、要望があれば検討する方針だ。