世界自然保護基金(WWF)は9日、年間30万頭を超える海洋哺乳(ほにゅう)類が漁業
の犠牲になっているとの報告書をまとめた。

 世界9水域で10種のイルカの仲間が絶滅の危機にあることも指摘し、海洋哺乳類を
過って捕らえる「混獲」を減らすよう、漁業手法を早急に改める必要性を訴えている。
来週にも、韓国で開催中の国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会で報告する。

 クジラやイルカが漁網にかかった場合、呼吸をするために海面へ浮上できず、死んでし
まう。こうした混獲の実態はよく分かっておらず、WWFが世界の専門家グループに調査を
依頼した。

 報告書によると、毎日1000頭ものクジラやイルカが混獲で死んでいる。このため東南
アジアや西アフリカ、南米などの海や湖、河川で各種のイルカが激減。ベトナムやタイに
すむイルカの1種は50〜70頭、黒海では77頭しか確認できなかった。

 WWFは「米国は漁業法の改良で混獲を3分の1に減らした」として、各国に同様の取り
組みを求めている。03年のIWCでは、日本のブリ漁の定置網によるクジラの混獲が問題
視され、非難決議案が採決される寸前になった。