外輪船アレクトーとスクリュー船ラットラーの綱引き勝負は
アレクトーに軍配が上がった

理由はラットラーのスクリューに巻き付いてこれを破損せしめた
漂流物であったが、それはスクリュー軸に巻き込まれて軸を変形
させ、船尾を貫通している軸周辺から機関室への浸水を招き、
沈没の危機にすら陥ったのだ
こうして外輪船がなおも世界の動力船の主流でありつつけた世界
(なにしろ、外輪船ならば船殻を貫通する動力軸は喫水よりも
上にあるので、ここから浸水するということはありえないのだ
保守的な船乗りは『船尾に穴があって軸が貫通している』スクリュー
船よりも、外輪船を望んだのである)

船腹の側部に外輪を備える船形デザインから、船尾に大型外輪を
備える船形デザインに切り替わると、外輪が砲門の邪魔になると
いうデメリットも解消され、いよいよ外輪全盛の時代となる

この世界でも日本は開国し、明治を迎え、艦隊を整備し始めていた
清国の巨大外輪戦艦「鎮遠」「定遠」に対抗すべく、日本がフランスに
発注した海防艦「厳島」「橋立」「松島」の3艦は、外輪を腹側に備えた
古くさいデザインの艦だったが、あるアイディアが用いられた秘密兵器
であったのだ

艦首方向に(固定配置)された巨大主砲 敵に撃つためには船全体の
方向を変えねばならない
だが、三景艦の外輪は、左右別々に意のままに回転させることが可能
であり、なんと右舷外輪を前進、左舷外輪を後進とすることで
「超信地旋回(その場で旋回)」することが可能だったのである

清艦撃破の志を秘め、超信地(海?)艦隊が進む