私は、戦後、日教組の誤りは、多くの方が指摘するだけでは終わらないと考え
ています。「政治的に偏向した教育をした」と言われますが、信念のない左翼教
育は、ただ、政治に無関心な子どもを作っただけでした。あの「教え子を戦場に
送るな」というお馴染みのスローガンは何だったのでしょう。教育者なら、身体
を張って、教え子が戦場に行くまでに、自分が、まず行くのが当たり前ではない
でしょうか。

　自分は絶対に安全地帯にいる。その思い上がりがあったために、子どもたちか
ら尊敬されることを失い、うさん臭さに警戒心をもたれたのです。同時に、すべて
の社会の出来事に責任をもって判断するという「政治的主体」になることを育て
てきませんでした。日本人の文化伝統に反するような、政治的な偏りを語ること
で、子どもたちは政治は怪しいものと敬遠してきたのです。

　陸自の隊員教育では身体を使います。さまざまな能力の異なる若者たちをいっ
しょにして、同じ課題に取り組ませる。ある陸曹はふり返ります。

『決まりを守ること。とにかく形を整えること。それだけを言われ、それができてい
れば、班長は決して叱らなかった。高校の先生みたいに、生き方がどうの、考え
方がどうのと説教をされることがなかった』

　自分の生き方や、人生は自分で決めるもの。形ができてくれば、自然に自分で
考えるようになる。仲間に迷惑をかけないことの大切さ、自分が行なったことが他
人にどういう影響があるかを考えるようになります……、若い隊員の教育にあたる
陸曹は語ります。


【特別号】「田母神論文」について-５ 『陸上自衛隊の「精神教育」あるいは「歴史
教育」』　荒木 肇
http://www.melma.com/backnumber_174026_4322994/