のちのちになって出てきた
5月1日の夜にN家の前で張り込みが行われたという、
次兄や所沢署長によるいかにも警察に都合の悪い証言には信憑性がある。
この張り込みは、事件かどうかにまだ疑問を持っていた警察が
申し訳程度に行った「本番」であった。
それから犯人を取り逃がした警察の狂気が始まる。

脅迫状に手を加え「前」を「さのヤ」に改竄し、
そこで大規模な張り込み体勢を敷いたが犯人が畑から現れたために
取り逃がしたというささやかな言い訳をつくると同時に、
被害者の殺害と警察の失態が無関係であると世間に思わせるために。

妹はもう殺されていると泣きじゃくっていた次姉が、
サノヤに立つ事を執拗に拒んだのも当然のことである。
偽犯人と次姉とのあの茶番劇のような会話は、
実際に茶番劇であった。