>>771
香織は部内のゴタゴタを鎮めるために、敢えて人身御供として立候補した、というように見えなくもないけど、
それはあくまで結果的にであって、香織が狙ったことでは無いように思う。

麗奈の方が上手いのは解ってる。
滝の評価が正確なのも疑っていない。
オーディションに不正があったとも思っていない。
部内に蔓延する噂や疑惑などこれっぽっちも意に介していない。

3年間頑張ってきた集大成として、全力の演奏をした、とちゃんとみんなに知ってもらいたい。
その上で、実力で凌駕する相手に敗れるのなら、それこそ本懐。
香織自身が2年生の時に実現できなかった「実力主義」がやっと叶うのだから。
実力で均衡しているのに不正で負けたなんて思われたくないし、そんな同情なんかされたくない。
なぜなら、「トランペットが好き」だから。

ただただ、ちゃんと「負け」たかったんだと思う。

再オーディションで優子が自ら負けを認め、「高坂さんが吹くべきだと思います」と宣言した瞬間こそが、
優子はじめ部員の皆が、香織の男気というか、本当の本気というのを初めて理解できた瞬間だと思う。
そして、あすかと晴香だけはその心意を最初から解っていた。