おお、見るが良い。ゴブリンスレイヤーの盾へ、その切っ先が沈む様を。
皮と木板と布を組み合わせた防御を、いとも容易く軽銀が貫いていく様を!
見る間、剣は盾を抜け、腕を貫き、革の肩当てをも貫いて、肉を穿つ手応えをもたらした。

刃を伝って滴った血が、雪に交じって桃色に飛沫する。
軽銀剣は確かに届き、ゴブリンスレイヤーの肩を鋭く抉っていた。
小鬼聖騎士は、確かに呻く声を聴いた。苦痛を押し殺す声。勝った、と。嗤う。

「かかったな」
だが、そこで終わりだった。
軽銀剣はそれ以上進まない。ぐいと力を込めて押し込んでも、刃は動かない。
鍔であった。
戦鎚としても使えるよう重い金属で作られた鍔が、盾に食い込み、捕らえている。

「ぬ、ぐ……!」
「ORAGA!?」
そして単純な膂力の差では、小鬼が只人に敵うべくもない。
円盾を貫いた軽銀剣を、ゴブリンスレイヤーは腕ごと捻るようにして奪い取る。

否、正しく言うのであれば貫かせたのだ。
でなくば――……でなくば。
何故にわざわざ、小鬼聖騎士に喧嘩殺法を見せる必要があったのか。
剣を折られた後にもかかわらず、盾で攻撃を受けようなどとしてみせたのか。

「ゴブリンは愚かであっても、間抜けではない、が…」