白痴結界と蜥蜴僧侶の演技に引っかかる小鬼神官 (P168以降)

「GROOOBR!」
開かれた大門と比較して小さな体躯。蜥蜴僧侶の大音声よりも小さな叫び。
現れたのは襤褸のようになった僧衣の裾を引きずって歩く、一匹の小鬼だ。
威厳たっぷりを気取っているのだろうが、とてとてとおぼつかない歩調は滑稽であり……。
故にこそ、戯画化された高慢な司祭のようで、かえっておぞましくもあった。(中略)

「では、この砦の頭目、聖騎士殿にお目通り願えますかな」
「GORA!GOROOM!」
「ああ、これなるは我が忠僕二人。そして供物に御在いまする」
大仰な身振りで手を振り、檻を指し示す蜥蜴僧侶の仕草は、実に堂々たるものだ。
「小癪な女冒険者をひっ捕らえましたのでな。うち一名に、供物の御印がありましたので」
「ORRRG!GAROOM!」
「ああ、そうでしょう。そうでしょう。では、獄に入れ、逃げぬよう手足を絶ちませぬと」

頷いた小鬼司祭が、蜥蜴僧侶を仕草で手招きし、一行を門内へと導き入れる。
無論のこと、蜥蜴僧侶とて小鬼語などわかろうはずもない。
ゴブリンの言葉はだいたいの場合、喚き散らす子供の叫び声で、意味も同じだからだ。
あれがほしい。これをよこせ。あいつがやった。あいつがわるい。

ではどうすれば良いかといえば…その鋭い舌が顎中で呟く祈祷に依る。
「〈大地を冠せし馬普龍よ。仮初なれど、われらも群れに加え給う〉」
念話の奇跡である。

   令状騎士は人間側の討伐者の首魁として顔や匂いを大勢のゴブリンにもう覚えられているはず。
   なのに、敵側は罠ではないかと疑わない…。
   このシーンから派生した追加設定が
   「小鬼は人間の女に欲情して知能を大幅に失う」設定なのかもしれない。