コソコソ。カサカサ。コソコソ。カサカサ。
筋肉が程よくついた太腿を枕に、須賀君のお腹に顔を埋めながら、私は耳掃除されている。
耳かき棒と粘着綿棒、濡れ綿棒という布陣で私の耳を清められていく実感。
時折髪を撫でられるのも、私の心の癒やし。
喘ぐような悶えるような、甘い声が漏れる。
なるほど、龍門渕の執事さんに師事していると聞いていたし、最近ではお嬢様にも信頼されていると聞いていたけれど、これほどとは。

濡れ綿棒が耳穴に残る耳垢のカスを取り去り、梵天のふわふわとした感触が、強張っていた身体から力を奪い。

「終わりましたよ、部長」
「まだでしょ…?」

唾液でベトベトの口の端を気にも止めず、私はおかわりをねだる。
そう、私が須賀くんの恋人だというマーキング。依存の形のひとつ。
ベッドに寝かされた私の耳に、須賀くんが甘噛みして。
須賀くんの吐息が、耳穴に吹き掛けられ。
あぁ、もうだめだ。
須賀くんの優しさに甘え、依存している状態から離脱しないといけないのに。
後輩たちが帰った後の部室での密会。
そこに依存している私は、きっともう抜けられない蟻地獄にハマっているのだ。

(ねぇ……須賀くん…?)
「須賀くんが噛んでいい耳は、私のだけよ」

それは、従属の証。隷属の誓い。
須賀くんに依存していいのは、私一人。
媚びるような眼差しで彼にマーキングをねだる、浅ましい女の幸福なのだ。