ある売れないお笑い芸人は、尾崎とは似ても似つかない風貌なんだけど、思想マネ、
つまり「その人が言いそうなことを言う」芸の一つとして「尾崎ネタ」の披露のチャンスを
窺っていた。ある温泉施設で年齢高めの客層につい気を許して「尾崎」を始めた。
常連の客だけウケてくれればいい、と。

まあ、「わかるやつだけわかりゃいい」ネタがひとしきり済んで、シメは舞台の
高いところから飛び降りて、アイタタタ、ってところでなんとか笑いをとって
めでたしめでたし。

見送りの若手社員が鬼の形相で彼を睨みつけていたことを後で知ったこの芸人は、
その後、この芸を封印した。